犬のアトピー性皮膚炎は犬全体の10%前後に発症がみられるといわれています。発症年齢は4ヵ月から7歳で、およそ70%は1歳から3歳で発症すると考えられています。日本ではウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、ラブラドール・レトリーバーなどの犬種でよくみられます。アトピーの原因となるアレルゲンの種類によって春から秋にかけて症状を示す場合と冬に症状を示す場合があります。ハウスダストマイト(家の中に居る数種類のダニ)などが原因の場合には季節にかかわらず発症します。
犬のアトピー性皮膚炎の診断にはさまざまな方法が提案されていますが、まずはWillemse先生が提案した「犬のアトピーの定義」を指標に考えていきます。
Willemse先生が提案した「犬のアトピーの定義」
各定義のうち少なくとも3項目ずつ充たす
大定義
- 掻痒(かゆみ)
- 顔面および/あるいは肢端(足の先)の発症
- 足根の屈筋面あるいは手根の伸筋面の苔癬化(象の皮膚のようにゴワゴワしている)
- 慢性あるいは慢性再発性(何度も繰り返し発症する)の皮膚炎
- アトピーの家族歴
- 好発犬種(ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、ラブラドール・レトリーバーなど)
小定義
- 3歳齢以下の発症
- 顔面の紅斑と口唇炎
- 細菌性結膜炎
- 表在性ブドウ球菌性膿皮症
- 多汗症
- 吸引アレルゲンへの皮内反応試験陽性
- 抗原特異的IgGdの上昇
- 抗原特異的IgEの上昇
治療
現在、アトピー性皮膚炎に対するファーストチョイスはコルチコステロイドの投与ですが、ステロイドの用量を少しでも減らしていくために、シクロスポリン、インターフェロン・ガンマなどを併用する場合もあります。治療はあくまでも症状の緩和です。ワンちゃんがつらい痒みから少しでも解放され、心地よい生活を提供してあげることが目的となります。